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三重県主催のバリアフリーフォーラム見聞記


平成15年10月28日に三重県主催のバリアフリーフォーラムにパネリストとして出席し、
翌29日は伊勢志摩バリアフリーツアーセンター主催の「視察ツアー」に参加しました。
2日間で見聞きし、考えたことです。


●伊勢志摩の印象
●志摩スペイン村
●基調講演・パネリスト
●私が話したかったこと
●参加者の顔ぶれ
●壇上で感じたこと
●三重県の先進性
●三重県の課題
●観光地は再生できるか
●日本全体での課題
●まとめ



●三重県バリアフリーウオッチング

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伊勢志摩の印象

この2年間で3回足を運んでいます。
三重県観光連盟主催の講演会、前、北川三重県知事との対談。そして今回。

東京から名古屋は新幹線を使い1時間40分で来てしまうのに、名古屋からスペイン村最寄の磯部駅まで2時間以上掛かるのは初めて来る人には驚きでしょうね。
名古屋から先はちょうど飽きた頃付く感じです。

この土地へ来て感じるのは自然の豊富さ。海の蒼さ、空の青さ、そして木々の緑はもっと自慢できるのに、伊勢志摩を自然でアピールする発想も欲しいところです。
鏡に映る自分の姿を見直してみてください。

伊勢神宮と言う絶大な集客マシンを持ちつつ、自然、文化、歴史、食事そして温泉。すべての要素が揃っていて、それでも観光客減少に悩んでいるのであれば原点に戻る必要があるのでは?


志摩スペイン村

テーマパーク付属ホテルとの先入観しかなく、あまり期待していなかったのですが、ハード面はもちろんスタッフの接遇レベルの高さに驚きました。若いスタッフがとてもリラックスしているのに気配りや気付きのレベルが高い。それをどのスタッフにも感じました。接遇の質が高いレベルで均一化されています。

現場におけるマネージメントの質も高いのでしょうね。
「今度はプライベートでゆっくり来たい」と感じさせるに充分です。


基調講演・パネリスト

基調講演はwawawa編集長の阿部恒世さん、パネリストとしてトラベルデザイナーのおそどまさこさん、伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの野口あゆみさん。そして私。

メンバー全員が爆弾を抱えて壇上にでるようなものでよくぞ三重県がこのメンバーをそろえたものだと思う。本来なら大学教授、シンクタンク、そして障害者団体代表と言ったメンバーあたりでお茶を濁していたでしょう。

現場の議論が不足しがちな現実味のないシンポジウムが以前は多かった、いや今でもほとんどがそうではないでしょうか。要するに面白くない。基調講演の時間に寝ている参加者って多いですよね。眠くなるような講演者を呼ぶな。
阿部さんの基調講演は現場の生々しい話が多くて面白く、あっという間に時間が過ぎました。


パネリストの皆さんと私が話したこと

 ・観光地は個別にはバリアフリーへの取り組みが進んでいるが、点と点が線でつながっていない
 ・伊勢志摩への主要な動線である近鉄の対応に疑問を感じることがある

  
阿部さんは名古屋駅でJRから近鉄への乗り継ぎで近鉄の駅員が約束の時間に迎えに来なかったので、危うく指定の特急に乗り遅れそうになった。特急車両の一部には車イス対応席があるらしいが、今まで見たことがないと。

私も以前どの列車にその設備があるか問い合わせたことがありますが、車両の運用は直前にならないとわからないと言われました。では、ドアにもっとも近い席を、と号車・席番号まで事前に聞いて買った席は、何とドアからもっとも遠い席でした。どこにいつやって来るか判らない設備はないのと同じだし間違った案内ならしないほうがいい。

些細なことがマイナスの口コミとなって広がり、現場の努力を台無しにします。

個人的には近鉄職員(駅員、車掌)の現場対応は悪くないと感じるので、サービスがしくみになっていないのは本社、マネージメントレベルの問題です。


参加者の顔ぶれ

 三重県の観光に携わっている方(少ない)、県外からの参加(多かった)、障害がある方、障害者団体代表、学生さんなど。

 データを見たわけではないので参加者の顔ぶれは壇上からの雰囲気や質疑応答、フォーラム後の雑談からのイメージです。三重県の観光に関わっている方の参加がちょっと少ないようにも感じました。いらっしゃっていたけどおとなしかったのかな?

県外は遠く福島、栃木や九州からもご参加を頂き、感謝です。何かを吸収しようと熱意を持っている方は皆さん目が輝いていますよね。


壇上で感じたこと

目的型のフォーラムなので、参加者の皆さんが真剣な眼差しで壇上からのメッセージに耳を傾けていらっしゃったのが印象的でした。飽きている人や寝ている人がまったくいない。
体が前傾姿勢の方が多かったのが真剣にご自分も議論に参加されている何よりの証拠です。


三重県の先進性

不充分な点があることを自覚しつつも「最初の一歩」を踏み出したことがとても大切です。
ステップアップの過程では期待や反発からさまざまな意見があるでしょうが、ぜひ頑張って初志貫徹して頂きたいものです。

自治体が助成金(飴)で民間を操るのではなく、自治体の役割と民間の役割を明確にし、そこにNPOを介在させて潤滑油にしている点が特徴です。


三重県の課題

他の自治体でも感じることですが、本来「お役所仕事」などと批判されている自治体職員の方に「やる気満々」のタイプが多く、民間は腰が引けているか、または興味がないパターンが多いのに驚かされます。

三重は官民とNPOの連携がうまく機能している方だと思いますが、取り組みに協力する民間とまったく関心のないところの温度差が大きくなってきているのではないでしょうか。

最後の部分で強制力を発動しないのであれば、やるやらないは事業者の勝手な訳ですから、成功チームの数を増やすことが絶対条件になってくる訳です。

また、ユニバーサルデザインやバリアフリーを浸透させるときに、過剰な「障害者論」を福祉発想で語るのも危険です。

どの部分まで(自治体の役割としての)福祉発想か、どこからはサービス業としての民間発想かをきちんと線引きしておかないと、民間に過剰な負担が掛かります。

助成金は出さずに、民間のフリーハンドの思想でサービスクオリティを高めるのが現段階ではもっとも効果が高いはずですから、こてこてのバリアフリー仕様の設備が増えすぎないことを祈ります。

バランス感覚は大切です。


観光地は再生できるか

誤解のないように予めお伝えしておきますが、私は海外旅行より国内旅行のほうが好きです。
日本人の心にいちばんすっと入って行けるのは日本の文化や自然であり、食べ物です。
高齢の方に限らず誰でもがそう感じるはずです。

しかし、伊勢志摩だけでなく全国的に観光客が激減しているらしいです。
何が原因か、自然や観光地としての魅力が壊滅したわけでもないのに。

そんなとき「そうだ、これだ」と私の心に共鳴した本があります。それは観光学でも大学教授が書いた本でもありません。

「せまく」売れ!「高く売れ!」「価値で売れ!」 藤村正宏著 
                 オーエス出版社 1300円(税別)



これは中小企業経営者向けのマーケッティング本なのですが、本文に「ダメ観光地は規制を強化してくれ」と言う章ががあります。

著者は宮島に出かけたときの例をあげ「自然や文化はとてつもなくすばらしいのに、あのお土産屋の下品さ、しつこさ、無礼さは尋常ではない。」と怒り、その印象だけで宮島はすべてを台無しにしていると断言しています。

私も同じような経験を日本中の「有名な」観光地でしています。

全国の良識ある旅人は恐らく著者の藤村さんを同じような体験をし、少しずつ観光地から足が遠のいて行くのでしょう。

それでも観光地には人が大勢いるって?いや、よく見てください。その団体は「▲X交通社」や「○○ツーリスト」の旗をぶらさげた添乗員の後ろに連なる集団でしょう。

激安旅行でやってきた方はお土産を買うかもしれませんが、また来てくれますか?
あの旅行形態のツアーに家族や若いカップルが参加していますか?

観光地再生を考える方、旅館の将来を真剣に模索している方、ぜひ藤村さんの本を読んで勉強して下さい。
でも、読むだけで行動できない方は1300円勿体無いから買わないほうがいいです。


「せまく」売れ!「高く売れ!」「価値で売れ!」 
藤村正宏著 オーエス出版社 1300円(税別)


観光地は全体で再生しないと、単独で出来る事には限界があります。
しかし、やらないと始まらない。若手の経営者にぜひ期待したいところです。
やる気のある人を皆で応援しましょう。


まとめ・日本全体の課題

三重県だけの問題ではありませんが、今回のフォーラムでも質疑応答の場面で

「車イスの話題ばかりで視覚障害者が無視されている。視覚障害者向けの情報提供もして欲しい」
「航空会社は障害者サポートの為に介護資格を持ったスタッフを空港に配置すべき」

などの主張が多く寄せられました。

主張そのものを否定するつもりはありませんが、たとえばwawawa編集長の阿部さんに
「車イスばかりじゃ不公平だ、視覚障害者の情報をもっと載せろ、それも自分は点字は読めないから点字以外の他の情報で。」と言った弱視の方がいましたが、阿部さんは福祉雑誌を作っているのではなく、車イス利用者の立場で車イス利用者の為の雑誌を編集、出版しているだけなのです。(阿部さんもそう答えていましたが)

当社にも「お前の会社は対象が高齢者に偏りすぎている」とか「先天性障害者の旅行する権利は」などの意見が寄せられることがあります。

しかし当社も独自の価値観、マーケティングに基づいてサービスを提供しているのであって
「○○もやるべき」との意見を民間企業に求めすぎるのには無理があることに障害者も気がつくべきです。敵を間違えるなと言いたい。

日本のバリアフリーへの取り組みの構図は、比較的意識の高い経営者がバリアフリーに取り組み(思いが強すぎる人が多いのも事実です)取り組みの過程で障害者から批判され、苦情が出て、力尽きてやめてしまうパターンのどれほど多いことか。

話を聞いてくれる人に「声を大にして訴えたい」気持ちは良く判りますが、私には本来自分達の味方である理解者のエネルギーを障害者自らが潰しているような気がしてなりません。


情報がないと言う障害者も、では果たしてどの程度努力をしているのか、疑問が残ります。
当社に「自分は障害があるから旅行に行けない」と訴える人の多くが、社会への批判ばかりしていて自らは何も行動を起こしていないのと似ています。


障害がある人の人権や生活の根源に関わる部分は行政だけでなく、社会全体が真剣に(時には強制力を持って)望むべきです。しかし旅行は個人のお金と責任で楽しむ余暇活動です。

・社会の理解
・受け入れ態勢、情報を含めた整備
・障害がある人の意識改革と自己責任



 ☆民間は不況だ金がない、とやらないことの言い訳探し、
 ☆障害者は行政や民間への批判ばかりで
建設的な意見が出ない
 ☆そして自治体は
縦割り行政の弊害。

これがバリア3横綱です。段差やトイレは問題の本質ではないはず。
お金を掛けなくても意識を変えればできることなどいくらでもあるのですから。


この3つが共にスキルアップすることが大切です。社会の理解と受け入れ態勢、情報整備は自治体と民間の責任である程度は取り組めます。

しかし障害がある人の意識改革も進まないことには「バリアフリー」はある時点でストップしてしまうような気がします。


               調査、文責 : ベルテンポ・代表取締役 高萩徳宗

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